「どうしたんですか、…」


動揺してはならない。
患者の安否は医者の胸の落ち着いているか否かに掛かっている、
…なんて、医者でも何でもない私が何を言うのか。


そんな事はどうでも良い。
取り敢えず止血でもしないと。

まさかりを置きつつ血塗れの男を仰向けに。
左腿の布が血で肌に張り付いていた。
一週間前、家の牛をからかいに野犬が入るのを思い出した。
右の大腿をやられてぐったりした所を思い出せば今でも腸が煮える。


「止血は心臓よりも高い位置に患部を…」


…なけなしの知識でやってみた。
切り株を男の腰の下に押し込むように引きずり落ち着かせる。
血は止まらない。
男の胸へ手を当てようとのばす、と…


緑のベストに腕のうずまき。
額の鉄板には木の葉の中の瞳のマーク。
何よりこの時代には見慣れぬ凛とした目。


「貴方…」
「そこかッ!!」
「ぇ?」


振り向けば顔横を裂き走る刃物。
思わずまさかりを握り男に背を向ける。


「何だってんだい、一体さぁ…」


かれこれ半年の付き合いのまさかりだ。
結構な重さと切れ味であるから、対人の戦いにも有効に…
…って何を危険なことを考えてますか私。


そうぐるぐる巡っていれば木漏れ日が相手の額に反射した。
まぶしさに目を細めて近付く彼らの額を見る。
横たわる彼と同じ模様だった。


これはもしかして。
いや有り得ない。
取り敢えずコスプレして森に入って遊んでたら
度が過ぎちゃいましたーな人々だ。
きっとそうだ、間違いない。


「彼、足に怪我を負ってらっしゃるので
早めに医者に連れていった方がよろしいかと」


そう唇に乗せまさかりを体で隠しながら後退り。
このまさかりは無実です、私は何もしていません。
そんなオーラを発しながらこっそり退こうとした。


が。


「―…ッんぃ!」


切り株の存在を忘れていた私は結構お茶目だ。
ついでにどこかへ頭をぶつけたらしく
脳味噌を揺らして意識を手放した。





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