私の住まいは一言で言えば田舎だ。





【序曲】





右を見ても左を見ても何をしても畑ばかり。
遠くを眺めて光が見えたら
それは金目の物とかではなく田圃である。

家の横には牛小屋、庭にはニワトリ。
そんな自然の中で
椅子やら机やら楽器やらを作るのが私の仕事。


テレビは無い。
面白くないし必要がないから。
流石に暖炉も無い。
乾燥した木を扱う家に火は御法度だから。




腹が減れば畑へいってお裾分けを貰い
お礼に牛一頭を譲ったり、
肉何グラムと言われれば首を捻って渡したり、と
いたって平和な毎日を過ごしている。


東京という物にあこがれはないのかい、と度々聞かれるが…
あそこには金蔓しかいないというのが私の考えだ。
無駄に広い家を買って無駄にリビングを増やして
無駄にぬくもりを得ようと家具を木で揃える。

無駄な人しかいないと私は思う。



*******


まさかり担いだ金太郎。
熊にまたがりお馬の稽古。

…いやいや。
ただいま、肩に乗る鉄の重みにため息を吐きつつ
近くの森へと移動中。

木を買うのは無理。
わざわざ金を出して木を買うには
私の腕は未熟すぎる。
…要するに、儲けも悪いし失敗も多い。
そんなもんだ、修行を終えたばかりの職人なんて。


「んーんッと」


昨日倒した切り株に腰を下ろしてまさかりを傍らに刺す。
鳥が騒ぎ小動物が掛け刃を揺らす。
そんな様を見遣り空を仰ぐ。
丁度木漏れ日が顔にかかる。


長閑だ。
何がともあれこれを長閑ではないと言い放つ馬鹿はいない。

体いっぱいに陽を浴び、必要に応じて木を伐り使う。
酸性雨だとか砂漠化だとか言う物とは縁のない地域。
こんな所に生まれて私はつくづく幸せ者だ、なんて。


移動にくたびれた体はだいたい癒えた。
さて仕事にかかろうか、とまさかりに手を伸ばして目を開く。





…鼻がおかしくなったのだろうか。
何故だか先刻とは空気が違う気がする。
血の匂いが混じったような…


「ッが、ひっ…」
「!」


背後すぐで苦しそうな吐息。
驚いて振り返れば…人が倒れていた。
しかも真紅のカーペットに横たわるように美しく。

…じゃねえ。